蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




「やっぱこのラスト、おれとしては考えちゃうな・・・」

「・・・え、なんで?」


感動の余韻に浸っていた絢乃の横で、慧はどこか切なげな目でテレビを見つめている。

その横顔に、絢乃は首を傾げた。


「怪人は彼女に全てを与えたのに、最後は裏切られてしまう。しかもその時の彼女のセリフが『醜いのは顔ではないわ、あなたが穢れているのは心よ』・・・だもんな」

「・・・」

「嫉妬で相手を殺そうとしたのは、ラウルも怪人も同じだ。なのに、自分の想いだけが全否定されてしまう。・・・ここまで完璧な失恋ってないよね」


慧は自嘲するように言う。

その寂しげな瞳に、絢乃は胸がなぜかきゅっと痛むのを感じた。

・・・慧はひょっとして、誰かに辛い恋をしているのだろうか。

もしくは過去、そういう恋愛をした・・・とか。

じっと見つめる絢乃の視線の先で、慧は呟く。


「彼女はラウルも怪人も好きだった。けれど結局、最後に選んだのはラウルだ。『貴方のことも好きだったわ』と言って、彼女はラウルと去っていく・・・」

「・・・」

「でも・・・カケラでも想いを貰えただけ、怪人は幸せなのかもな。だからあんなにきっぱりと、彼女を諦めることができたのかもしれない・・・」


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