蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・消えてたのは何回?」
「今朝で三回です」
「何かの夜間バッチでデータが消されてる可能性は?」
「ないです。このデータに干渉するバッチプログラムはないことを確認しました」
絢乃の言葉に、卓海はしばしの沈黙の後、顔を上げた。
向かいに座った絢乃の顔を、ちらりと見る。
「・・・で? お前の頼みごとって?」
「今日だけで構いません。調査したいので、私のIDにアドミニストレータの権限を付与してください」
絢乃は不本意ながらも、ぺこりと頭を下げて言った。
・・・とてつもなくシャクだが、仕方がない。
頭を下げた絢乃を卓海はじっと見つめていたが、その瞳がやがて楽しげに細められた。
「・・・そ。なるほどね。アドミニの権限を付与してほしい、と」
「はい。一時間でも構いません」
「ダメ」