蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
あっさりとした卓海の言葉に、絢乃は顔を上げた。
───見ると。
卓海はいつもの、黒く歪んだ微笑みを浮かべている。
けれどその瞳は、どことなく真剣だ。
「お前ごときにアドミニ権限なんて、例え一時間でも与えられるワケないだろ。例えばそれでお前がデータベース全削除とかしたら、オレは首を括るしかない」
「・・・っ、で、でも・・・」
「例えテスト系でも、お前にアドミニ権限を与えるのは無理だ。・・・というわけで、残された方法はただひとつ」
卓海は唇の端を歪め、うっすらと笑った。
その、黒い魔性の微笑み。
なまじ顔が整っている分、その黒さが余計に際立つ。
絢乃は背筋がぞっとするのを感じながら、必死に考えた。
・・・残された方法はひとつ、って・・・
絢乃はそれに思い至ったが、思わずぶんぶんと首を振ってしまった。
・・・イヤだ、そんなことを頼んだら、代わりに何を要求されるか・・・
しかしもう、ここまで来たら頼まないわけにはいかない。
絢乃は震える唇を開き、掠れた声で言った。