蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】

8.鬼の企み




その日の夜。

温泉旅館内に設えられた宴席の会場で、絢乃は飲み物オーダーのメモとペンを手に席の間を走り回っていた。

宴席は20:00までの予定で、その後はお開きとなる。

人によってはその後、二次会や部屋飲みに突入するらしいが、そこからは幹事の仕事の範疇ではない。


「絢乃ちゃん、あの端のテーブルにオーダー聞いてきて?」

「はいっ」


宴席の担当幹事は卓海なので、絢乃は卓海の指示のもと、オーダー取りに駆け回っていた。

・・・といっても基本的に御用聞きだけなので、昨日の肉体労働に比べたらかなりラクだ。

実際の運搬作業は旅館の人がやってくれるので、重いものを運ぶ必要もない。

けれど・・・。

ぐぅ、とお腹が鳴り、絢乃はため息をついた。

・・・駆け回っているので、ほとんど食事ができない。

幹事だから仕方がないと諦めてはいるが・・・。

それに、食事をしていないのは卓海も同じだ。

後で残り物でもいいから貰えないかな、と思った時。



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