蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




慧に呼ばれ、絢乃ははっと顔を上げた。

・・・見ると。

既に慧が、サイクリングセンターの前にいる。


「ここは自転車の方がいいよ。歩いて回れる広さじゃないしね」

「・・・っていうか、慧兄も一緒に回るの?」

「当たり前だろ。病み上がりのお前を一人にできるわけないだろ?」


どうやら昨日の件で、慧の過保護モードが全開になってしまったらしい。

うう、と思いながら、絢乃は自転車を借りた。

ちなみに絢乃が26インチ、慧は28インチの自転車だ。


「自転車乗るのも久しぶりだな~・・・」

「そうだね・・・」


絢乃が自転車に乗っていたのは、中学の頃までだ。

・・・もう、何年振りだろうか。

乗れるだろうか、と思いながらサドルに跨った絢乃だったが、体は昔の感覚を覚えているらしい。

二人は自転車に乗り、公園の中を散策した。


< 278 / 438 >

この作品をシェア

pagetop