蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



卓海は絢乃を自分の胸の前へと引き寄せ、がしっと両肩を掴んだ。

───逃げられない。

絢乃は息を飲み、卓海を見上げた。

卓海はじっと絢乃を見つめ、その形の良い桜色の唇を開く。


「・・・慧が実の兄じゃないというのは、本当か?」


予想外の言葉に、絢乃は思わず目を見開いた。

・・・なぜ、卓海がそれを知っているのか。

といっても、卓海と慧は高校の頃からの知り合いだ。

何かのタイミングで知ってもおかしくはない・・・とは思うのだが・・・。

しかし、目前の卓海の様子はなんだか普通ではない。

怪訝に思いつつも、絢乃は軽く頷いた。


「ええ。従兄ですけど・・・?」

「・・・っ・・・」


絢乃の言葉に、卓海はぐっと唇を噛みしめた。

と同時に、絢乃の肩に置かれた手に力が籠められる。

・・・その、力強さ。

呆然と卓海を見る絢乃の前で、卓海は唇の端でクッと笑った。


< 414 / 438 >

この作品をシェア

pagetop