恋愛温度(番外編も完結しました)
「ここは?」


結局、沖縄は、

殆どを病院で過ごすことになってしまった私たち。

こっちに戻ってから、すぐにタクシーできたところは、

どこかの墓苑。

和司は途中で買った、花とお線香を供えながら、


「俺の母親の墓。」


といった。


「え?」


驚いて見上げる私に。

無言で頷く和司。

そんなはずはないのだ、和司の母親はご健在で、

実家にちゃんといらっしゃる。


「戸籍の上では、他人の母親。俺はこの人から生まれた。」


驚いて言葉も出ない私に、


「俺の嘘はこの人の腹から生まれた時から始まった。

 汚い大人の事情で生まれ、育てられた人間なんだ。」


体調が戻っていないだけではない、

その冷たい無表情な横顔は、

血の通わない無機質なものに見える。













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