夏の日差しと狼のいろ。



 「起きてください、着きましたよ」

 ゆさゆさと体を揺らされ
 ツキはぱちりと目を開けた。


 目の前ではアルがじぃっと
 こっちを見つめている。


 ツキはむくりと体を起こし、
 辺りを見回した。



 「わぁ…」


 さっきよりさらに美しく光る
 水面が永遠に続き、

 そこに町が浮かんでいる。



 「すごいね、綺麗だね!」


 上がりまくるテンションを抑えきれず、
 キラキラした瞳でツキは
 アルと町を交互に見た。





 「…ツキさん、五月蝿いです」

 アルは迷惑そうにさっと
 横に避けると、いそいそと
 ゴンドラから降り立ってのびをした。



 なんだかあんまり
 驚いてないみたい。


 同じく寝起きっぽいウルーは
 ツキと同じように
 珍しそうにキョロキョロしている。



 「アルちゃん来たことあるの?」


 ツキがほいっと質問を投げかけると
 アルはけろりと答えた。




 「いえ、私、昔ここに
  住んでましたから。」






 ………?!



 「えぇーーッ!?」



 「…五月蝿いです」


 
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