夏の日差しと狼のいろ。



 部屋に戻ると、
 ウルーが目だけ開いていた。


 「……」


 無言でぼーっとしている。


 昨日のことでちょっと
 気恥ずかしいながらも

 ツキは声をかけた。



 「あの…ウルー、おはよ」



 「……おはよう」



 ゆっくりこっちに
 半分だけ開けた目を向ける。
 


 ツキが「?」と首をかしげると
 ウルーは目を開けたまま、

 またぼーっとした。




 「ウルー?どうしたの?」

 「……」


 「…ウルーってば」


 ウルーは聞こえてる、と
 尻尾を一度ぱさりとして


 しばらくして呟く。



 「……頭痛い」


 必要最低限、

 それだけ伝えると うー…とか
 唸りながら目を閉じた。




 ツキはくすりと微笑んでから
 明日に向けて、支度を始めた。





 (アルちゃんともお別れかな)



 ちょっと寂しいな…と
 思いつつ荷物をまとめる。




 昨日のアルの様子が
 ちょっとおかしかったから

 余計に気になってしまった。




 そうしているうちに、
 ガチャ、と部屋のドアが開いた。




 「…お、おはよ」


 金髪の頭にいっぱい寝癖をつけて
 思いっ切りクマの出来た顔で


 入ってきたのはイクアだった。



 めずらしく頭からひょっこりと
 耳を覗かせて、


 ちょっと赤い顔で言う。


 「…俺らはさ、今日
  ミラ・レヴィラに帰るぜ

  き、昨日のアレ…」



 心臓がどきり、とする。

 だいぶ恥ずかしい。




 「俺諦めねーからなっ!!」


 「え、ええっ」

 「何がなんでもだっ!」


 そう叫ぶとイクアは
 リルを叩き起こす。



 リルがむにゃむにゃと
 目を擦る。


 「リルちゃん、おはよ」


 リルに挨拶したのもつかの間、
 イクアがもう一度言う。


 「リル!!帰るぞ!」


 「ん…あ…うん…」


 欠伸しながら言うと
 リルはこっちをちらりと見た。



 「姫、またね…」


 ツキは微笑み帰すと言った。



 「二人とも!またミラ・レヴィラで!」








 二人は嵐のように去っていった。


< 212 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop