夏の日差しと狼のいろ。


 「ラルズ…!」


 ツキが小さく悲鳴をあげるように
 言うと、少女…ラルズは
 ニィっと笑った。


 「僕…許さないよぉ…?」



 そう言うと、
 向こうに歩き出し、

 手をクイッと動かした。


 ついて来い、ということだろう。



 ツキはウルーと
 顔を見合わすと頷いた。



 「…いくか」


 ウルーはツキを背負ったまま
 歩き出した。


 ウルーには申し訳ないけれど
 手首から出血しすぎたせいで

 ふらふらで歩けない。


 ウルーは気にするようすもなく
 一歩一歩、ラルズに
 ついていった。







 やがて、広い場所に出た。


 辺り一面の森の樹海に
 ぽっかりと穴が空くように

 その空間は広がっていた。



 真ん中には湖があり、
 そのほとりで

 ラルズの双子の兄らしき
 少年が横たわっている。



 すでに、動けないみたいだ。



 そうしているうちに
 ラルズが少年のもとに行き、

 頭を抱えあげて
 ツキたちを冷めた目でみた。



 「猫さんは向こうにほっといたよ

 僕が恨むのは、狼だから…」



 ばっとツキは
 ラルズの見た方向を見た。


 その先には
 半分体を湖につけて

 アルが死んだように
 横たわっている。



 ぴくりとも動かず、
 本当に死んでいるみたいで…




 「さぁ、僕らと遊ぼぉ?」






 次の瞬間、
 ラルズの額に何か紋章があらわれ

 抱きかかえていた
 少年の額にも現れた。



 金色の羽が神々しい光を放つ。



 ラルズは言った。


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