夏の日差しと狼のいろ。


 そう言われ、
 ツキはウルーの背中から

 そっと顔をのぞかせ
 辺りを素早くみた。



 しかし、何も見当たらない。



 ツキはほっとし、
 もう一度ウルーの背中に

 顔をうめた。




 もし、ここに
 アルの死体なんかが、

 転がっていたら
 ツキは悲しみでどうにか
 なってしまっていただろう。



 アルの死体も
 双子の死体もないということは。




 「アルは生きてるってことだな」


 ウルーも同じことを
 思ったらしく、そう言った。



 ツキはこくりと頷く。





 その時
 後ろでさくり、という
 草を踏む足音が聞こえた。


 さっと振り返る。



 そこでツキは驚愕の表情を
 浮かべてしまう。




 「えへっ…セーフ、だよぉ…」


 確かにボロボロで傷だらけだけど

 そこにはあの少女が立っていたから。



 ふらふらの少女は
 槍を杖代わりにして


 ツキ達の前にやってきて
 虚ろに目を輝かせる。




 「…お兄も僕も…死んじゃうかと
  …思ったんだよぉ…」




 少女の目には
 はっきりと憎しみのいろが
 浮かんでいた。
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