夏の日差しと狼のいろ。

「……っ」

ツキの手から、
ぱた、と血が落ちた。


見ると、小さな切り傷が
できていた。



ウルーがこっちに
飛び込んできたとき、

ウルーの爪が当たったらしい。



(ウルーが、私を傷つけるなんて…)


いつもツキを1番大事に
してくれていたウルーに

傷をつけられた。



何があっても
傷つけたりしなかったのに。


何があってウルーが
こうなってしまったのか
わからなかったが


ツキは胸の奥が
ぎゅうっと締め付けられるような
痛みを感じた。

『ほら見ろ…
てめぇらがワリィとウルーは
思ってるだろーよ』


ツキは、そんな言葉は
聞こえていなかった。


痛い…

胸が、痛い。


それでも、次の言葉は
ツキに信じられない衝撃を与えた。



『雪狼が、銀月狼を
滅ぼしたとサンドルに聞いた。

理屈は通っている…だからな」











「俺は…もうツキと居たくない』











見開いたツキの瞳から
また涙が零れた。



雪狼はそんなことしていない。


サンドルの赤い瞳が不気味に
光り、




ウルーが言った
"ツキと居たくない"と言う言葉が

矢のように心に刺さり
ツキはその場にへたりこんだ。




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