夏の日差しと狼のいろ。

「ウルー様のばか!」


へたり込むツキの横を
さっとかすめアルが
ウルーの前に立った。



その琥珀色の瞳には
激しい怒りをたたえている。


しかしウルーは動じず、
無表情なままだった。


ぴくりと尻尾を
動かすことさえしない。



「操られたのはわかりました
でもいくらなんでも
それは言っちゃいけないでしょう!」




アルは尻尾の毛を逆立て
思い切り怒鳴った。


怒りでわなわなと震えている。



『…そんなことはどうでもいいんだ』

ウルーは本当に
どうでもよさそうに首を振った。



「…!!」

アルが怒りで言葉を詰まらせた。




ツキはその光景を
ぼぅっと見ていた。



すると黒い狼のサンドルが
そっと近寄ってきて
鋭く耳打ちした。




『俺にはすべての狼族を
滅ぼす理由がある。

雪狼を倒すにはウルーの力が居る。

だからちょいと記憶を
変えさせてもらった』




黒い狼は一旦言葉を切って、
みずみずしい獲物を
前にしているみたいに
舌なめずりした。



『それに、俺は吸血狼だからよ?
血を吸った奴らの能力が
コピーできるわけだ、小娘』




そう言うと
顎でクイッとアルを指す。




『どこぞ闇猫の血を
吸わせてもらった。

どの一族も目を使う技が
あって便利すぎるぜ…クク』



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