夏の日差しと狼のいろ。



はっと気がついたときには夕暮れだった。

「ど、どうしよう」


ツキは慌てる前に町に向かって走りだした。

夜になったら大変だ。

しかし辺りが暗くなってきて自分がつけてきた足跡が見えない。


ツキは焦りでがむしゃらに走ってしまった。


おかげで足跡を見失う。


(もう間に合わない…私、死んじゃうのかな)

かつての時のように死の恐怖を覚えた。

でもツキは走り続けた。


(諦めない!)


しかし背後に何かの気配を感じる。


―いつの日かの蜘蛛だ。

それも、ずいぶんとでかい。


「きゃ…っ!」

ツキは前だけを向いて逃げようと走りだした。

しかし、追いつかれて前にまわられてしまった。


もうダメだ。

蜘蛛の大きな足がツキを切り裂こうとした、

その時――…
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