神様修行はじめます! 其の二
「一時間でも二時間でも、泣いていいぞ。ちっとも恥ずかしい事でねぇからな」


当主さんの、大きくてゴツゴツの手。

痛いくらいの無骨な手。

その手で、何度も何度も頭をなでられた。


土と草の匂いがする・・・。

それと、お日様の匂いが。


当主さんは、永世おばあ様の写真を見た。


「どんなに辛くても、どんなに悲しくても・・・」


そう、何度も何度も小さくつぶやく。



あぁ・・・そうか。

さっき廊下で聞いた声は、これだったんだ。


当主さんが、おばあ様の写真を見ながら語りかけていたんだ。


そして、自分自身に語りかけていたんだ。



当主さんは梅干おにぎりに齧りついた。


がつがつって音が聞こえそうなくらい、勢い良く食べた。


食べ終えて、こぶしでグイッと口元をぬぐう。


そして当主さんは立ち上がった。

強い意志の光をたたえた目で。


「嬢ちゃん、オラ行くよ」

「当主さん・・・」

「やらねばなんねぇ事が山積みだからなぁ」



そう言って、当主さんは部屋から出て行った。

のっそりと、ゆっくりと。

でも確実な足取りで。


当主さんは、歩き出したんだ。

種から出た芽が、固い土を押し上げて、空を見ようとするように。

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