神様修行はじめます! 其の二
あわあわ慌てるあたしを尻目に、門川君は落ち着いている。

「別に早まってはいないよ」

「いやでも、ここはいったん帰って体勢を立て直して・・・」

「小娘、お前こそ少し落ち着かんか」

絹糸が呆れたようにあたしを見て言った。


「もう戦いが始まっているものを、我らが帰って何とする?」

「この場での撤退はすなわち、敗北を意味するんだよ」

「いやでもやっぱり・・・」


だからこそ、ここは引いたほうがいいんじゃないの?

だって絶対に負けるわけにはいかない戦いなんだよ?

なら、計画を立て直して・・・。


「それに、どこへ帰るというんだ?」

「あ・・・・・」

そうか。この決起がバレちゃってるって事は、権田原にも帰れない。


門川君は上を見上げ、荒れ狂う喧騒を聞く。


「もはや帰る場所などない。背水の陣だよ。それに・・・」


ハシゴに手をかけ、しっかりと握り締める。


「僕は負けるつもりも、目指す場所から逃げるつもりも、望む事を諦めるつもりも無いんだよ」


門川君・・・。


「勝算ならございます。この抜け道の事は門川側には知られておりません」

「セバスチャンさん」

「こんなに早い決起とは思っていなかったでしょう」
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