神様修行はじめます! 其の二
奥方は、じぃっと門川君の言葉に聞き入っていた。

なんだか、すごく真剣に聞き入っているようだった。

そしてハッと気付き、慌てたように扇子で顔を覆う。


門川君はあたしの手を握った。

そのまま言葉を続ける。

「会えて良かったと思える相手に出会える事、そして、そう言ってもらえる事・・・」


彼の手に、いっそう力がこめられた。


「それが幸せでなくてなんだと言うのです?」


あたしは強く強く、彼の手を握り返した。


「僕はあのふたりに出会えて良かった。あのふたりは・・・」


うん、そうだ。あのふたりは・・・


「幸せだったのです」


お兄さん・・・秋風さん!

あなた達が生まれてくれて、あなた達に出会えて、本当に良かった!


また新たに涙が流れた。

でもその涙は、今までとは違っていた。

怒りとか悲しみとか、そんな涙とは全然違う涙だった。


この世に生まれてきた事を、感謝し合える相手がいる。

お兄さんも秋風さんは、お互いがそうだった。

だったら決して決して、あのふたりは無意味なんかじゃない。


それがあのふたりの全てだ!

無意味なんて、他人が決めれる事じゃない!


心が救われるように感じる。

納得できた気がする。答えが見つかった気がする。
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