幕末トリップガール~陰陽少女と新撰組~
「馬鹿、痛い……」

「姫」


彼は、小野寺の黒く傷みのない艶やかな髪にキスをした。






「ひじ、かた……?」

「忘れんなよ」



その唇は、ゆっくりと小野寺の唇に近づいていく。




「なにを、」

「お前は俺のモンだってこと」

にやり、と意地悪な笑み。





「…………馬鹿あ!」

「はいはい」






少女の鳴く声と、美しい月。

月の光に照らされる、小さな薄紫色の花に白い花。










小野寺はこの日、確かに体温を感じた。

それは暖かくて、愛しいものだった。


生きていた中で一番幸せだと思えた瞬間。




「愛してる」を何度も囁きあった時間。





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