幸せになろう
第20話 別れの足音
 エレーナと出会ってから、不思議と慎一の周りに人が集まるようになった。
以前は、時々夏穂が遊びに来る程度だったが、彼女と知り合ってから、
綾香や亡き姉と再会したり、最近は天上界からの来客も多い。
綾香との再会には、エレーナは直接関与していないと言うが、エレーナの力が
影響しているのは、間違いない。
慎一はエレーナの力で過去に戻って、引っ越して行く綾香と再会の約束までした。
その事が綾香を、慎一に再会したいという気持ちにさせたのかもしれない。
それは、エレーナ自身も気づかないまま、彼女の天使の力が働いたのだろう。
もしエレーナと出会わなかったら、慎一は、綾香と再会出来たか分からない。
そしてエレーナは、姉さやかとも再会させた。
慎一も最初は信じられなかったが、さやかは天使になって戻って来た。
朝倉夕菜とは、川での事故がなくてもいずれ出会っていたかもしれない。
何と夕菜は、両親の友人の娘だった。
しかも彼女は、宮原家にホームステイまでした。
そして、イザベラ・エレガンス幹部にジェシー・クリスタル、サラ・シンフォニーなどの天上界の人々…。
今まで、本当にいろいろな事があった。
両親と仲直り出来たのも、エレーナやさやかのおかげだ。
もし、あのふたりがいなかったら、仲直り出来なかっただろう。
慎一は今、さやか、エレーナと3人で暮らしている。
エレーナとの関係も良好。
慎一は今までで、最高の幸せを謳歌していた。
幸せ過ぎて、いつかその幸せが壊れてしまうかもしれないと思うと、慎一は恐いぐらいだ。

 玄関のインターホンが鳴った。あれ? 誰だろう。
慎一がドアを開けると、なんとルーシー・ウェールズが立っていた。
「ルーシー、何で君がここに? しかも謹慎中じゃなかったっけ?」
「謹慎中の研修も終わりましたので、また来ました」
以前ルーシーは、人間界でトラブルを起こした。天上界で謹慎処分になってから、まだ日は浅い。
研修がそんなに早く終わるはずはないと思った慎一。
「じゃあ、どうしてここに?」
「今回は、実地研修なんです」
「実地研修って?」
慎一が聞き返すと、
「人間界で修行して一人前の天使になる研修です。
実はこれ、イザベラ・エレガンス幹部のアイディアで、人間界の企業研修などを参考にしたんです。
そして、その研修先に慎一さん宅が選ばれたんです。
ですから、エレーナさんと、さやかさんは、私の指導教官という訳です」
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