幸せになろう
「正規契約は終身契約。決して軽いものじゃありません。
だから、慎一さんは、正規契約に慎重になったんです」
幹部3「だが、これは不適切な契約と言わざるをえません」
幹部1「貴方は、三つの不正をしています。このような契約は無効です。
今すぐ宮原慎一との契約を解除しなさい」
「お待ち下さい。これには訳があります。私の話を聞いて下さい」
エレーナが必死で弁解しようとするものの、
幹部1「いかなる事情があろうとも、このような不正は、認める訳にはいきません」
幹部達は決して応じず、しゃくし定規だ。

 なぜエレーナと慎一がこのような不正契約に至ったのか、疑問を感じた
ジェシー・クリスタルは、独自に調査を始めた。
契約管理官の仕事は、不適切契約、不正行為がないか監視すること。
そして、不正があった場合の経緯の分析、契約者との関係調査など多岐にわたる。
さらには、契約した人間の心理状態まで調べる事が出来る。
契約に関わる情報は、全て、天上界に伝わる仕組みになっている。
つまり、ブラックボックスのようなものだ。
情報分析をしていたジェシーは、ふたりの契約の以外な経緯を突き止めた。
「これは、どういうことだ」
ジェシーは、エレーナが過去に契約していた者を調べ始めた。
そして、慎一の前の契約者とのトラブルを突き止めた。
「まさか、こんなことになっていたとは」

 一方、幹部会では議論が続けられていた。
エレーナからの聞き取り調査だけでは不十分、
契約者本人からも、直接話を聴くべきとの意見が、多数出た。
「ジェシー・クリスタル、人間界に行き、宮原慎一をここに連れて来なさい」
幹部1がジェシーにそう命じた。

 人間界、宮原家。慎一が眠れない夜を過ごしていた。
エレーナ、今頃どうしているのだろう。
なんで、こんなことになったんだろう。自分が何か悪いことをしたのだろうか?
あれこれ考えをめぐらせる。
天使召喚術を使えないのは違反。慎一は、ジェシー・クリスタルの言葉を思い出していた。

 突然、激しい光とともに慎一の前にジェシーが、姿を現した。
「ジェシー・クリスタル! そうだ、エレーナは?」
「エレーナは、謹慎中だ。それより幹部会からの命令でお前を迎えに来た。
今から私と一緒に天上界へ来い」
ジェシーは、慎一に同行を求める。
「天上界が俺を?」
「幹部会が、契約者のお前からも直接話を聴きたいとの意向だ」
< 23 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop