幸せになろう
だいたい天上界なんてどこにあるか分からないし、人間技では、どうすることも出来ない。
でもなんとかしなければ。慎一はあれこれ考えてみたが、無駄だった。

 一方その頃、天上界ではエレーナが幹部会から尋問を受けていた。
そこで、重大な不正契約を指摘された。
「エレーナ・フローレンス、貴方は契約に関する重大な不正を犯しています」
「何がいけないというのでしょうか?」
エレーナは不正の意味がよく分からない。
幹部1の指摘によると、
「まず、正規の契約手続きを行っていないということです。
私達天使は、召喚術によって人間に呼び出されて、初めて契約が成立します。
貴方は、天使召喚術を使えない者と契約しました」
「お待ち下さい。これには訳が……」
エレーナは異議を申し立てようとする。
「天使召喚術が使えないのであれば、無資格契約と同じです。人間は、召喚術を使えて、初めて天使との契約資格を持ちます」
「天上界が、人間に天使召喚術を直接教えることはありません。
但し、ごく一部に使いこなせる者がいて、それは代々受け継がれてきました。
それに、我々が人間に天使召喚術などを教えれば、それこそ天上界の重大な規則違反になります」
幹部2が補足する。
さらに幹部1は指摘を続ける。
「それから二つ目の違反は、相手を選んで契約したことです」
「でも、慎一さんは、清く正しい心を持っています」
エレーナは反論するが幹部達は聞き入れない。幹部2によると、
「天使は、召喚術によって自分を呼びだす事が出来た人間と契約します。
だから、こちらから相手を選ぶことは出来ません。
誰が召喚されるか分からないので、人間も天使を選べません。
つまり、互いに相手を選ぶことは出来ないということです」
「貴方は宮原慎一という相手を選んで契約しました。これは、不正行為にあたります」と幹部1。
天上界の規則では、互いに相手を選んで契約する事は出来ない。
「私達は、正しい心を持った人間との契約を望んでいるはずです。
慎一さんは私達の求める人です。それがいけないというのですか?」
エレーナは、慎一が天上界の理想とする契約者であることを強調、理解を求めた。
「たとえそうであっても、相手を選ぶことは、契約の公平性を保てません。
他の契約者達にも悪影響を及ぼすでしょう」と、幹部2がくぎを刺す。
幹部1「そして三つ目は、契約の不適切です。貴方達は、正規の契約を交わさずに、いつまでも仮契約を繰り返しています」
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