幸せになろう
全く勝手な両親だ。なんでもかんでも勝手に決めて。
慎一もエレーナを連れ込んでいるから、人の事は言えないか。
慎一は、文句を言わないことにした。
「慎一さん、記憶戻ったんだってね。本当に良かった」
「それより、どうして宮原家に預けられる事になったの?」
「学校で海外ホームステイのポスターを見たの。
親に行きたいって頼んだら、海外は無理だけど代わりに知人宅を紹介するって。
それが、偶然ここだったの。
でも行き先を聞かされたときは本当に驚いた。
これからは、毎日慎一さんと一緒に居られると思うとすごく嬉しい。
それに学校からも近いし」
夕菜ははしゃぐ。
「夕菜さんって、俺の両親と会ったのは今日が初めて?」
「はい、初めて」
本当に偶然なのか?最初からこいつが仕組んだんじゃないのか?
いったい親達をどう丸め込んだんだ。慎一は、夕菜を疑った。
それにしても不思議だ。夕菜は何度も家に来ているのに、今まで慎一の両親とは一度も
会った事がなかった。夕菜が来るときは、なぜか両親は出かけていた。
やっぱり単なる偶然か?
 夕飯の時だった。夕菜が話し始めると急に家族の雰囲気が変わった。
今まで、ギクシャクしていた雰囲気が急に和んだ。
夕菜はすごく不思議だ。
彼女は、一躍宮原家のムードメーカーになった。
その食事の時、慎一の母、和江が、突然意表を突くような事を言い出した。
「慎一、明日からまた、父さんと母さんは出かけるからね。
今度はいつ帰って来られるか分からないから、夕菜さんのことお願いね」
それじゃ、優菜を預かっている意味がない。
他人の娘を預かったまま、放ったらかして、また出かけるとはどこまで勝手な親達なんだ。
慎一は、あきれ果てた。
 翌日から、慎一、エレーナ、そして夕菜の三人での生活が始まった。
夕菜は、慎一に積極的に話掛けてくる。
慎一と夕菜が、楽しそうに話しているのを見て、エレーナは面白くなかった。
「慎一さん、私、夕菜さんと一緒にいるのは、嫌です。
夏穂さんや綾香さんといるときは何でもないのに、でも夕菜さんだけは嫌なんです。
慎一さんと夕菜さんが仲良くしているのを見るのは、私はとても辛いんです」
エレーナは、優菜に対する不満を口にする。
「しかし、そう言われても、夕菜さんを追い出す訳にはいかないし、
そんな事したら、また父さん達に何をされるか分からない」






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