幸せになろう
「今の慎一なら、やりかねないな」
ジェシーは危機感を募らせる。だが、イザべラ幹部は意外な見方をする。
「いいえ、彼が本気でそんなことするとは思えません」
「どうしてそんなことが言えるんですか?」
ジェシーは戸惑う。
「慎一は、エレーナを守るために契約しました。
契約管理システムの改善要求をしたのもエレーナのためです。
慎一にとってエレーナは誰よりも大切なのです。
天上界はエレーナや私達にとっていわば故郷。
天上界を破壊すればエレーナが悲しむのは目に見えています。
エレーナを悲しませるような事を、慎一が本気でやるとは思えません」
イザべラ幹部の言葉に納得したのか、ジェシーはそれ以上異議を唱えなかった。
「もういい。もう誰も信じない。天上界の連中はみんな同じだ!」
「しばらく様子を見ましょう。エレーナ、慎一の事を宜しく頼みますよ」
イザべラ幹部は、エレーナに後の事を任せ、天使達と引き上げて行った。
慎一は家に引きこもり、誰にも合わなくなった。 
「慎一さん……」
エレーナは胸が痛んだ。
突然発生したマイナスエネルギー問題は、慎一と天上界の間に大きな亀裂を生じさせた。


 
< 46 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop