夏の月夜と狐のいろ。


リリィはシアンの心のささえだ。

シアンが肩に久しぶりに乗っているリリィを撫でていると、ふいにリリィが悲しそうな目でこちらを見つめてきた。



『あの狐たちは・・・』


そう言ってリリィが尻尾で指すほうを見ると、木の傍に横たわらせていた母狐たちの亡骸が目に入った。


シアンもトーンを落として答える。


「うん・・・死んでたわ。きっと子供たちを守ろうとして」


シアンは再び子狐たちを抱きかかえる。
横でノエルもそっと母狐を抱きかかえて悲しそうな顔をした。


埋葬してあげなきゃ・・・。



『燃えてなくなっているかもしれませんが、代々先祖の狐たちが眠っている墓場に埋めてあげましょう、シアン様』


リリィは悲しみににごった瞳をこちらに向けながら、そう言った。


< 130 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop