夏の月夜と狐のいろ。
「ああ!本当だったのですねアザリア様!
こんなにも異端の悪魔憑きが!」
シアン達が扉を開いた瞬間に響き渡ったのは、そんな神父の声。
神父の横には気絶しているのか項垂れて縛られているノエルと
小柄な修道女の格好をした少女が佇んでいる。
横から覗く長い髪は薄紫色で、顔はヴェールに隠れて見えなかった。
ただ、そのアザリアと呼ばれた少女のくちもとだけはにやりと笑っているのがみてとれる。
「正しいよ 私のいうことはいつも」
アザリアは少し変わった話し方でそう言った。
そして神父は嬉しそうにアザリアに頭を下げ、すぐにぎらついた目で、
けれどおだやかな声でこちらに語りかける。
「さあこちらに来なさい。お前たちは存在自体が悪だ。
ならば有効につかわれるほうがいいでしょう」
シアンはすぐにラシッドに使われる、という意味に解釈した。
--・・・そんなの絶対に嫌よ!
むくむくとわきあがる思いにシアンは唸りながら神父をにらみつける。
「嫌よ!私たちはここで捕まるわけにはいかないの!
さあノエルを返して!」
けれど、そんな言葉を無視し神父はこちらに近づく。
そしてふと、シアンの後ろに目をとめて
誰かに軽く頭を下げた。
シアンが振り向くその先に居たのは。
すっぽりと外套をかぶり、冷たい目でこちらを見るクロだった。
「これはこれはクロウ様!アザリアさまから話は訊いています。こちらへどうぞ!」