夏の月夜と狐のいろ。

「もう!まってくださいよシアン様ぁ・・・」


ヘナヘナと疲れたようすのリリィは
情けない声を出しながらそう言った。


走りつかれたのか、リリィはシアンの傍までくると
ごろんと寝転がってしまった。


「リリィは体力ないわね」


そういいながら、リリィの頭をなでる。


リリィはシアンより年上だけど、
意外とどんくさくて、体力もない。


けれどリリィはずっと生まれたときからシアンの傍にいて、
とても大事な存在だ。



母は私が生まれてすぐに死んでしまった。


シアンは全然覚えていないのだけれど
母も九尾の尾を持つ、綺麗な銀狐だったという。


ティアドールは、母に恋し、母もティアドールを愛し、シアンが生まれた。



けれどもともと体が弱かった母はシアンを生んだあとすぐに衰弱していったらしい。


だから貴重な九尾狐は今や、ティアドールとシアンしかいない。



だからリリィもそうだけれど、森の狐たちはシアンをとても大事にしてくれた。


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