猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

「椿妃は蓮君を生んでから、絵本コレクターになったのね、それで何かの用でカトレアに行った時に、あそこで見た絵を気に入って他の童話の世界も描いて欲しがってたの」

そうか、
蓮の本好きはお母さん譲りだったのね。

「あれと同じ人だと気づいたのは、猫の絵が東堂家に飾られてサインを見たときなのよ。それからずっと彼女を探してたわ」

「そうですか」

「美桜ちゃん、椿妃はね、あなたがお腹にいるって知った日に偶然その病院で綾乃さんを見つけたの」

「えっ?!」

「綾乃さんの顔は知らなかったけれど、偶然耳にした看護士さんの噂話に【あやの】っていう名前と【絵が上手】ってワードにもしかして、と思ったみたい」

そう言えば、お母さんも勘の働く人だった。

「入院されている事を知って、改めて会いに行ったら、一緒にいた友人らしき人にものすごい剣幕で帰されて、次に会いに行った時にはもう綾乃さんは……」

そう……、やっぱりね。
お母さんを追い返したのはきっと絢士さんのお母様だったのよ。

「おば様、実はその綾乃さんのご友人だと思う人の息子さんと、私お付き合いしているんです」

「まあ!」

志津果さんにこれまでの事情を話ながら、美桜はすっきりと心が晴れていくのを感じていた。

疑問は解決した。

これで絢士さんに事情を話しても大丈夫。
そして、おじさまにも別の絵の存在を話せる。

お母様にはきっとわかってもらえるはずよ。

あー早く絢士さんに会いたい!
会って全てを話したら結婚して欲しいって自分から言ってしまおうかしら。

せっかく来たけれど明日にでも日本に帰ろう

「ふふっ」

「まったく頭の中は彼でいっぱいね、でも美桜ちゃんが幸せを見つけてくれて私も嬉しいわ」

その夜はお母さんの話をしてちょっぴりしんみりしながら、志津果さんと二人昔話に花を咲かせた。

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