猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

思い立ったら


アンティークショップ【Silver spoon】は水曜と土、日が定休日で基本9:00~18: 00まで営業している。

お店に並べられているのは、オーナーである東堂の趣味で集めたコレクションや、店長の美桜が気に入ったものを飾ってある。

この店の主な収益は企業のVIPルームや新しくオープ ンするショップ、個人のお宅に依頼されてアンティークの家具等を揃える事。

スタッフは美桜の他に経理を任せている男性がいるが、必要な時だけ店にきて普段は彼の父親の会計事務所で働いている。
それから美桜が海外に買い付けに行く時や商談のある時は、次兄の陽人や日向に店番をお願いしている。

美桜は、子供の頃から古いものが大好きだった。

大きな柱時計や、細かい手作業が施された宝石箱。
色の深みや味が歴史を教えてくれる棚に、何代も大切に使われてきたテーブルやその家で代々大切にしてきた食器。
どれも見た瞬間から心を躍らされると同時に、
気持ちを落ち着かせてくれる。

他人は目利きとか言うが、母の実家が古い家柄で幼い頃からそういうものに囲まれて育ったせいで本物を理解し見分ける力が育っていたのかも知れない。

この仕事は自分にとてもしっくり馴染んでいる。

「ねえ?なかなか来ないわね」

あの日から1週間が過ぎていた。

美桜は引き出しから名刺を出して、デスクに座るクリスタルの猫に話しかけていた。

先日まで店頭の小さなギャラリーに飾っていたものだが、どうしてか呼ばれた気がして自分のデスクに持ってきてしまった。

猫はしたり顔で笑っている。

「なによ、私が気になっているのは絵の方よ」

確かに彼はいい男だったけれど……
ええ、認めてしまえばあの別れ際の笑顔にはちょっとやられたわ、でもそれとこれとは別よ。

美桜は壁の絵を見上げた。

「どう思う?」

この絵と同じ猫の絵を持っている……?
そんなって事あるかし ら?

同じようなタッチのものならわかるわ。
でも彼は、猫の模様が一緒だと言ってた。
この模様はこの画家にしか描けないと思うのよね。

偶然?

そうじゃないとしたら、どういう事?
この画家の作品が他にもあるって事よね?

もしそうならば、東堂のおじさまはきっと欲しがるわ

でも――

そうではなくて……

そんな事はありえないと思うけれど、誰かがこの店で見たのを模写してを売っているというならば、必ず見つけ出さなくてはいけないわ。

「あなただってそう思うでしょう?」

猫は相変わらずしたり顔で笑っている。

「あーもう!!わかったわ」

確かめてみましょう

そうよ、
ここでグズグズ考えていたって何もわからないわ。

美桜は名刺をバッグに入れて、閉店にはまだ少し早いけれど入り口の札をCLOSEにした。



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