猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

急に車が止まったので、美桜が涙を拭って顔をあげると、そこは人がほとんどいない教会の前だった。

「おじさま?」

「美桜……あれ、あそこにいる日本人……」

ハンドルの上から乗り出すように前を見ている東堂の指す指先を見た。

「ほらっ」

「あっ、絢士さん」

「やっぱりか……」

東堂は瞳を反らさずに彼の姿を追いながら、微笑んでいる。

もう!『顔がわからないから付いてきてくれ』なんて言ってたのに、こんな遠目ですぐにわかるじゃない。

美桜は小さく首を振って笑った。

「私はここで待ってますね」

「いや、それは……」

「ここまで来てグズグズしないで下さい」

美桜は車を降りて運転席にまわると、東堂を運転席から引っ張りだした。

「ほら早く!行って!」

もたもたと降りた東堂は、始め仕方なさそうに歩き出して、数歩進むうちに早足になりやがて全速力で駆け出した。



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