RUBY EYE
転校なんて初めてだし、目立つのも好きじゃない。
オレンジジュースを飲みながら、月野は落ち着こうと何度も深呼吸を繰り返す。
「そんな無駄な努力してないで、行くぞ。遅刻する」
「ちょっと待って! 行ってきます」
黒のカーディガンを羽織り、月野は先に席を立った十夜を追いかけた。
「大丈夫でしょうか、月野さん」
「そのために、十夜がいるのよ」
空になったカップを小野瀬に差し出すと、温かな紅茶が注がれた。
「綺麗な桜・・・・・・」
通学路を、桜の花びらがひらひらと舞う。
「コケるなよ」
月野と違い、十夜は桜に目もくれない。
「こんなにも綺麗なのに」
「何か言ったか?」
ボソッと言ったはずなのに、聞こえていたらしい。
「なんでもないです」
慌てて誤魔化し、月野は十夜の後ろを歩く。