RUBY EYE

「許婚になれば、十夜に好きになってもらえると思ったの」

「・・・・・・?」

「小さかったから、許婚になれれば、大丈夫だと思ってた」


無邪気なあの頃には、もう戻れない。


「桐条さ―――愛理・・・・・・?」

「十夜の気持ちくらい、わかってた」


ずっと、十夜だけを見てきたから。


「でも、スッキリしてる、今の私」


愛理が、こちらを向いた。

今まで見てきた笑顔の中で、一番、綺麗な笑顔に見えた。


許婚の立場に固執し続け、今になって解放された。

それは、憎たらしいけど、目の前の彼女のおかげ。


「ねぇ、そっち行ってもいい?」

「う、うん」


愛理が枕を持って、月野のベッドに潜り込む。


「狭いわね」

「シングルだから」


愛理は笑いながら、月野に抱き着いた。

月野は一瞬驚いたけど、そのぬくもりに目を閉じた。


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