RUBY EYE

清香が摩耶を連れて出ていくと、時臣は重々しく告げた。


「殺せ、と言ったはずだ」

「わかっております」


頭を下げて顔を見せない慶介に、時臣はため息をつく。


「ならば何故、摩耶がいる? 何故生きている?!」


7年前のあの日、摩耶の存在を危惧した時臣は、綾織家当主として、命令を下した。


「お前は当主の命に逆らったのかっ?」

「実の娘を手に掛けるなど、出来るはずもありません」


震える声と体。

慶介は泣いているのかもしれない。


「慶介・・・・・・っ」

「地下牢で暮らしていれば、誰にも迷惑がかからないと思ったのです」


妻の清香も、賛成した。

妹の愛理には死んだと告げ、葬儀まで行った。


「・・・・・・何故、地下牢から出した?」

「・・・・・・わかりません。地下牢の鍵が、開けられていたのです」


限られた者しか知らない、地下牢の秘密。

だというのに、鍵は開けられ、摩耶は外へ。


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