RUBY EYE

摩耶に問うても、知らないの一点張り。


「伊織か? ・・・・・・摩耶が地下牢から出たのはいつの話だ?」

「ちょうど、咎堕ちの脱走があった頃かと。騒ぎで気づきませんでした」

「・・・・・・伊織はその時、本家―――ここにいた」


十夜と伊織が睨み合っていたのを、何人かの者が目撃している。

十夜なら大丈夫と、誰も気にしていなかったようだが。


(咎堕ちは陽動? だとするなら、一体誰が・・・・・・)

「如何なる処罰も覚悟しております」


慶介の姿に、時臣は顔を歪ませる。


「摩耶を屋敷から出すな。十夜とも会わせるな」

「あ、ありがとうございます!」


歓喜の声を上げる慶介。

しかし、時臣の心は晴れない。


摩耶の存在など、とうの昔に忘れ去っていたというのに。


「・・・・・・」


不穏な風が吹いた、気がした。

それは、時臣の頬を撫でると、嘲笑するように、通り抜けていった。


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