RUBY EYE

十夜は腕の中で大人しくしている月野を、保健室のベッドに座らせた。


―――ビクッ。


十夜の指が首筋に触れる瞬間、月野の体が強張った。

わかってる。

今目の前にいるのは、自分を押し倒した浦部じゃない。

でも、無意識の内に体が恐怖を訴えた。


「少し待ってろ」


十夜は嫌な顔ひとつせず、消毒液を染み込ませたガーゼを持って、戻ってきた。


「首、拭いてやるから」

「う、うん・・・・・・」


舐められた現場を目撃したからこその配慮だろう。

十夜は優しい手つきで、月野の首筋から胸元までを拭いてくれる。

消毒液の臭いは好きじゃないけど、今は浦部の名残を消してくれる。


「手」

「え?」

「血がついてる」

「・・・・・・うん」


自分の血だ。

いつの間にか、血は止まっていたけど。


「・・・・・・ごめんなさい」


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