RUBY EYE
手を拭き終えて、十夜はガーゼを近くのごみ箱に捨てた。
「綾織くんの言ったこと、守らなくて・・・・・・」
涙が流れそうになるのを、必死に我慢する。
せめてもの意地だ。
「ごめん、なさい・・・・・・っ」
声が震えるのは、今更ながらに、恐怖がジワジワと足元から這い上がってくるから。
怖かった。
あんなことが起きるなんて、思いもしなかった。
「気にするな。お前が無事だったんだ。それでいい」
「・・・・・・うん、ありがとう」
十夜が手を握るから、我慢していた涙が溢れ出した。
冷たくて固い床と違って、十夜の手は温かくて柔らかい。
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
「いいよ。俺の方こそ、悪かった。ひとりにして」
抱き寄せられ、月野は十夜の胸に顔を埋める。
背中に回された十夜の手が、月野の背中を優しくさすってくれる。