RUBY EYE

手を拭き終えて、十夜はガーゼを近くのごみ箱に捨てた。


「綾織くんの言ったこと、守らなくて・・・・・・」


涙が流れそうになるのを、必死に我慢する。

せめてもの意地だ。


「ごめん、なさい・・・・・・っ」


声が震えるのは、今更ながらに、恐怖がジワジワと足元から這い上がってくるから。

怖かった。

あんなことが起きるなんて、思いもしなかった。


「気にするな。お前が無事だったんだ。それでいい」

「・・・・・・うん、ありがとう」


十夜が手を握るから、我慢していた涙が溢れ出した。

冷たくて固い床と違って、十夜の手は温かくて柔らかい。


「ご、ごめんなさい・・・・・・」

「いいよ。俺の方こそ、悪かった。ひとりにして」


抱き寄せられ、月野は十夜の胸に顔を埋める。

背中に回された十夜の手が、月野の背中を優しくさすってくれる。


< 46 / 403 >

この作品をシェア

pagetop