RUBY EYE
「聞いていた時間より早いな」
「えっと、早い電車に間に合ったので、それに乗って・・・・・・」
状況はいまいち掴めないが、この人は自分のことを知っているらしい。
青年は懐中時計を仕舞うと、月野を睨むように見た。
「そういうことは言ってもらわないと困る。迎えに行くのに、入れ違いになったらどうするんだ」
「・・・・・・え〜っと、私の迎えに来てくれたんですか?」
「あぁ。お前の祖母、音無 美鶴に頼まれてな」
ようやく知った名前を聞けて、月野は安堵する。
目の前の青年が誰かはわからないが、少なくとも、先程の男性よりも安心できるようだ。
「よかった。また変な人に会ったのかと思った」
「変な人?」
「いえ、いい人そうだったんですよ。案内してくれる、って言ってくれたし」
変な人って言うのは、失礼かもしれない。
本当にいい人だったのかもしれないし、逃げ出さなくてもよかったのだろうか?