RUBY EYE
今更、罪悪感が込み上げてきた。
(悪いことしたかも。もし、また会うことがあったら、謝らないと)
そんなことを考える月野の耳に、ふと苛立ちを含んだ舌打ちが聞こえてきた。
「チッ・・・・・・。早めに迎えに行くべきだった」
「あ、あの?」
何か気に障るようなことでもしただろうか?
目の前で舌打ちされたのは初めてで、対応に困る。
「いや、なんでもない。行くぞ」
「え? ちょ、待ってください!」
さっさと階段を上っていく青年を、月野は慌てて追いかけた。
「つ、疲れた・・・・・・」
休むことなく階段を駆け上がった月野は、先を歩く青年を恨めしげに見つめる。
歩調を緩めるどころか、気遣いの一言さえなかった。
(はぁ・・・・・・。と言うか、この人誰なんだろ? 私と年齢は同じくらいに見えるけど)