RUBY EYE
キス
許婚と聞くと、やっぱり由緒正しい家柄とか、お金持ちとか、そういうイメージが、単純だけど浮かんでしまう。
ごく普通の生活を送ってきた月野からすれば、縁遠い単語。
もちろん、周りに許婚がいる人なんていなかった。
だから、つい愛理をジッと見つめてしまっていた。
「何よ? なんか言いなさいよ」
「ご、ごめんなさい。そっか、許婚か」
ということは、将来、十夜と愛理は結婚するのだろう。
「だから諦めるのね。私は、小さい頃から十夜だけを見てきたの」
どうしてか、愛理が急に語りだす。
月野は仕方なく、黙って聞くことにした。
「十夜に相応しくあるために、血の滲むような努力をしてきたの」
「あ、ヴァンパイアだから血の滲む・・・・・・ごめんなさい」
ちょっと、場の空気を明るくしようと思ったのだが、逆効果だったらしい。