RUBY EYE
聞いても無意味な仮定の話だが、美鶴でもなく、自分でもない、別の誰かの選択を知りたい。
「生きていてほしいと思う。美鶴さんは、俺の恩人だから」
十夜の答えに、月野は安心したように顔を上げた。
「でも、美鶴さんが望むなら―――殺して救えるなら」
「・・・・・・」
僅かに光った安堵の炎を、一瞬にして吹き消された気分だ。
月野は俯き、唇を噛み締めた。
そう、彼も美鶴もヴァンパイアで、生きてきた世界が違う。
自分と同じ考え方、自分が望む答えを求めちゃいけないのかもしれない。
「月野・・・・・・泣くな」
「泣いてないわ」
頬に触れようとした十夜の手を、月野は払い落とす。
「ご、ごめんなさい」
爪が当たって、十夜の手の平に赤い線が浮かび上がる。
「いや、すぐ治―――」
言いかけて、十夜は傷を隠すように手を握る。