RUBY EYE
落ち着きかけていた心が、また騒ぎ出す。
やめて!
殺してなんて言わないで!
「あ!」
前も見ずに走る中、月野は誰かにぶつかり、廊下に尻餅をついた。
「せめて、前を見て走れ」
「綾織くん・・・・・・」
見上げた視界に移る、人間離れした容姿の十夜。
差し出された手を取ろうとして、月野はやっぱり手を引っ込めた。
「・・・・・・どうかしたのか?」
「・・・・・・」
十夜は屈んで、月野の顔を覗き込んだ。
「頬が濡れてるな。泣いたのか?」
暖かい十夜の手を、月野はやんわりと払う。
「月野?」
「綾織くんは、おばあちゃんに殺してって言われたら・・・・・・どうする?」
「そんなことは、有り得ない」
「もしもの話よ」
十夜がダンピールでないことは、月野もちゃんとわかってる。