xxxFORTUNE 〜恋の魔法〜



「なっ、おまっ……バカ、何やってんだよ」

零れて広がった水を、愛琉さんがティッシュで拭く。

そのうち里音が布巾を持ってきてくれた。


「ヒメ大丈夫?」

立ち竦むあたしに気付いて、佐久間さんが声をかけてくれる。

誠はあからさまに深く息を吐いて、恋千くんは頬杖をついたまま様子を窺っていた。



不意に誰かに手を掴まれて震えた身体。


「濡れてる」

静かにそう言って、愛琉さんが水のかかったあたしの手をティッシュで拭いてくれていた。



「おまえ、なんでそんな焦ってんだよ」

あたしにしか聞こえないくらいの大きさで、伝えられる。

何も言えず黙っていると、席に着く前に一言。



「あとで部屋来い」


余計どうしようもなくなる鼓動。



どう伝えたらいいの?

どう言えばいいの?

これは、なに?



再び人間界に戻ってきた日、愛琉さんに言われたことが脳内で繰り返し蘇る。



あの日以来、彼とまともに目も合わせられないの。

あたしってば、どうしたのかしら。



この複雑な気持ちは、いったい───?






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