エレーナ再びそれぞれの想い
 エレーナとジェシーは、学生寮の屋上でふたりきりになった。
「まさか、あいつがあんな生い立ちだったとはな」
ジェシーは、天を仰いだ。
「シュウ君は、自分の事を私達に話した事がありませんでした」
「あいつは、いつも前向きで、気丈に振る舞い、どんな時も持ち前の明るさで
乗り越えて来た。弱音なんか吐かない。
あの性格と強さは、辛い過去を乗り越え、白川家の一員となる中で形成されていったものだ。
シュウは、今まで辛い過去を我が身に封印してきた。
そして決して喋らなかった。
過去を封印する事で、強くなってきたのだ。あいつは、そういう奴だ。
宮原慎一として生き、そして生まれ変わった。
せっかく生まれ変わったのに今まで以上に不幸になった。
あいつは死んで幽霊になってまで苦しみ続ければならないと言うのか!」
ジェシーは拳を握り、声を荒らげた。
「エレーナ、私達は宮原慎一のために何をした?」
ジェシーうつむきながら、力ない声でそう言った。
「幸せにしようと努力しました」とエレーナ。
「そうだ、私達は慎一を幸せにするために努力をした。
それなのに、生まれ変わってまで不幸になるとは、私達の努力は一体何だったんだ! 
教えてくれ! 私達の存在って一体何なんだ!」
ジェシーは、再び大声を張り上げると、握った拳で、屋上の床を激しく殴りつけた。
ジェシーは、手が紅色に染まるまで何度も何度も、床を殴りつけた。
「ジェシーさん、落ち着いて下さい!」
見ていられなくなったエレーナは、ジェシーを押さえつけ、拳を止めようとした。
だが、腕力でエレーナはジェシーにかなわない。
エレーナは、ジェシーに振り飛ばされた。
普段は冷静なジェシーがひどい荒れようだ。
エレーナはこんなジェシーは今まで見た事がなかった。
エレーナは必死でジェシーをなだめた。
「慎一さんは、負の感情をため込んでマイナスエネルギーを発生させました。
でもシュウ君は違います。
前向きな性格で、どんな辛い事も乗り越えてきました。
イザベラ・エレガンス幹部がマイナスエネルギーが再発しないように処置してくれたのが、良かったのではないでしょうか」
エレーナの言葉にジェシーの拳が止まった。
「エレガンス幹部のおかげで、シュウ君はあれだけ不幸な目に遭ってもマイナス
エネルギーを発生させていません。
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