エレーナ再びそれぞれの想い
エレガンス幹部は、何がシュウにそこまでさせるのか知りたいと思った。
それともうひとつ、シュウの中に作業をする上で、迷いや相応しくない動機がないか確かめるためだ。
少しでもそういうものがあれば、シュウを思いとどまらせる事が出来たし、
また、エレガンス幹部自身、心の底ではそれを望んでいたのかもしれない。
エレガンス幹部は、シュウがどう答えるか、彼の表情、態度、しぐさまで注視していた。
シュウはきっぱりと答えた。
「エレーナさん達のためです。
エレーナさんが、幽霊の僕を人に見えるようにしてくれたおかげで、友達がたくさん出来ました。
それに、災害で2度も家族失った僕を、エレーナさん達は何があっても、ずっと寄り添い、励ましてくれました。
今、僕がこうしていられるのは、エレーナさん、プリシラさん、そして、さやかさんのおかげなんです。
だから、エレーナさん達を絶対に失いたくありません」
シュウの決意は、揺るぎないものだった。
それは、エレガンス幹部自身の迷いが消えた瞬間でもあった。
シュウの決意が、エレガンス幹部自身の迷いを捨てさせた、それは間違いない。
シュウに背中を押されたのは、むしろ、エレガンス幹部の方だったのだ。
エレガンス幹部は微笑んだ。そして、シュウを激励し、褒め讃えた。
 
 シュウとエレーナ達は、一度人間界へ戻り、とりあえず名陵学園由乃高校で、今まで通りの学校生活を続ける。
他の天使達は、清らかな心を持つ人間を捜しまわった。
巨大樹の力を回復させるには、シュウの心だけでは、あまりにも足りなさすぎる。
新たな協力者はどのようにして確保するのか……
そうこうしている間にも巨大樹の力はどんどん低下していき、ついに、天使達の活動にも大きな支障が出始めた。
一般クラスの天使達の中には、体調を崩して動けなくなる者も出始めた。
プリシラは、力不足に陥り寝込んだ。
「その体で動くのは危険よ」
さやかは、無理に起き上がろうとするプリシラを止めた。
「このままじゃまずいですね」
エレーナも危機感を募らせた。
これ以上体力を消耗すれば、プリシラは死ぬかもしれない。
それはエレーナ達も分かっていたが、そういう話はかえってプリシラに不安を与えるだけだ。
シュウ、エレーナ、さやかは、プリシラには聞こえないように、部屋を出て、寮の廊下で会話していた。
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