エレーナ再びそれぞれの想い
「真面目で優秀、職務に忠実で厳しいだけでは足りないんです。
エレーナに有って、貴方に足りない物……
それはさっき貴方が、エレーナは契約者に下手に感情移入し過ぎると、批判した部分な
んです。
貴方、言ったでしょう? エレーナは、契約者思いで最も天使らしい天使だって。
優秀な貴方ならは、さっきの問いの答えを分かっていたはずです。
でも答えたくなかった。答えたらエレーナを認めた事になるから」
ジェシーはハッとさせられた。
エレガンス幹部はジェシーの心理を見事に見抜いていた。
ジェシーは、エレガンス幹部に自身をまるで全て見透かされているかのように思えた。
「最近エレーナはすごく成長していると思いません?
エレーナは、宮原慎一と契約して成長しました。
そして、中間クラスになってからは、より大きく成長し続けています。
今のエレーナは、上級クラスに極めて近いです」
エレーナは力を与えなくても、近い将来必ず、自力で上級クラスへ昇格するだけの実力
があるとエレガンス幹部は見ていた。
「エレーナの上級クラスへの覚醒は近い。だだ、それまで天上界がもつか……」
天上界の崩壊より先にエレーナが上級クラスへ昇格できるかは現段階では微妙だ。
幹部達の判断で、巨大樹の僅かな力をエレーナに与えれば、簡単に昇格は可能だ。
だが、エレガンス幹部としては、エレーナが自分の力で上級クラスになる事を望んでい
た。
いきなり上級クラスの力を得ても、心の強さが追いつかなければ、空回りするだけ。
上級クラスたる天使には、実力だけでなく強い心が共なわなければならない。
そういう意味からすれば、ジェシーのエレーナは優しすぎる、契約者に下手に感情移入
し過ぎるために、いざという時に何も出来ない、という指摘は的をいぬいている。
確かに、エレーナは優しくて契約者思い。それが彼女の長所だが、時に災いする事もあ
る、もろ刃の剣だ。
エレーナの心がやや弱い事はエレガンス幹部も認めざるおえない。
だからこそ、力を与えられて能力だけ急激に成長するよりは、心の成長を伴う自力昇格
の方が、エレーナの将来のためにも良いとエレガンス幹部は考えていた。
だが、この非常時、沈着冷静、現実主義のエレガンス幹部には、似つかわしくない理想
論だ。
今は理想論など追い掛けている場合じゃない事は、彼女自身重々承知していた。
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