エレーナ再びそれぞれの想い
エレーナの杖はさらに重くなった。
「私も手伝う」
「私も」
クラスメイト達が杖を支えるのを手伝った。
「みんな、ありがとうございます。人間界のため、天上界のため、みんな幸せになれ!

エレーナは、ふと、グラシアの言葉を思い出した。
「貴方にはまだ信頼出来る人達がいるでしょ。貴方は天上界を絶対護って!」
エレーナは、杖を握る手に力を込め、両足を踏ん張った。
「私にはこれだけたくさんの人々が力を貸してくれている。
私は絶対に天上界を護る! グラシアさんのためにも」
エレーナが光輝き出した。体からオーラを発している。
「エレーナの上級天使への覚せいが始まったようですね」
エレガンス幹部は、遠く離れた人間界にいるエレーナから発せられるオーラに気づいた

「幹部、これで天上界が崩壊する前に間に合いそうですね」
ジェシーが嬉しそうに言葉を掛けた。だが、エレガンス幹部の表情に笑みはなかった。
他の幹部達もなぜか、厳しい表情のまま。
エレーナは、杖の重さと、人々の想いを天上界へ送り届けるために精いっぱいで、自分
の体がどうなっているか全く気づいていない。
順調だった。順調に事がはこんでいるように見えた。
ところが、巨大樹の生命力は回復するどころか、どんどん低下していったのだった。
いくら力を与え続けても、何も状況は好転しない。
「そんな、なぜ……」
ジェシーは、幹部達が厳しい表情を変えなかった訳に気づいた。
エレーナが覚せいした地点で、既に時は遅かった。
名陵学園では、エレーナ達はそうとは知らず、さらに想いの力を送り続ける。
杖に蓄えられた力は、天上界にどんどん吸い上げられていく。
皆、だんだん疲れてきた。
「お願い皆さん、もう少し頑張って下さい! 私に力を貸して下さい。みんな、幸せに
なれ!」
しかし、ついにその時が来た。
巨大樹の大きな枝の一つが枯れ、落ちた。
さらに、巨大樹とその周囲を取り囲んでいる、巨大樹と同じ種類の木々達も、ガタガタ
とけたたましい音を立てて、倒れたのであった。
「巨大樹が……」
ジェシーが悲鳴を上げた。
老木はついに力尽きた。
天上界では、天使達が次々に消滅していった。
「私達は今までやれることはすべてやってきました。でも現実を受け入れるしかありませんね」
エレガンス幹部は崩れゆく巨大樹を見つめた。
ジェシーは不安そうにエレガンス幹部を見つめた。
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