エレーナ再びそれぞれの想い
それは、驚くべき黒川忍の真実。
では、黒川は何のためにそこまでしていたのか?
なつみはこの時、黒川が、好きで女子高生になっているのだろうと、あまり深く
理由を考えなかった。
 
 なつみは、天使を良く思っていなかった。
かつてなつみの母は、ある天使と 契約していた。
だがその天使は、病弱な母を見殺しにした。
なつみが産まれてすぐに、母は死んだと育ての親から聞かされていた。
なつみの中で増幅された激しい憎しみは、黒川、シオミ、そしてさらに、エレーナ達にまで及ぶことになる。
 なつみは、黒川の秘密にしばらくショックを受けていたが、やがてこう考えるようになった。
普通のやり方ではシュウを追い出せない。
だったら、シュウに協力的な人達を、ひとりづつ退けて、孤立させればいい。
敵を攻めるにはまず外堀から。
黒川の娘、聡美は、なつみと同級生。
聡美の年齢から察すると、黒川忍の実年齢は40代のおばさん。しかも子持ち。
これは使える。

 なつみは、シュウとふたりきりになる機会を見計らって、こう切り出した。
「黒川さんとずいぶん仲が良いけれど、あんた達どういう関係?」
「突然どうしたんですか?」
机の上に腰を掛けるとなつみはわざと間を置いてこう続ける。
「クラスのみんなも噂しているよ。あんたら付き合っているんじゃないかって」
「そんな事ないですよ。黒川さんとは、ただの友達ですよ」
なつみはシュウを横目でチラッと見た。
「果たしてそうかしらね? 私にはそんな風に見えないけど」
「何が言いたいんですか?」
なつみはシュウの顔をジッと見つめるとこう言った。
「じゃあ、黒川さんの事どう思っているの?」
「どうって、そう言われても……」
シュウは困惑し、何も言えなくなった。
「もっと自分の気持ちに素直になったら? 好きなんでしょ? 黒川さんの事。
私には分かるわよ。あんたの黒川さんに接する時の態度を見ていたら」
「いえ、別に、僕はそんなんじゃありません!」
シュウはむきになった。
「むきになるってことは図星ね」
なつみは、黒川の事を突けば突くほどむきになるシュウが面白くてたまらない。
「好きなら好きって言えばいいじゃん」
「だから僕はそんなんじゃ……」
「私だったら嫌だな。あんなおばさん」
なつみはわざとそうつぶやいた。
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