エレーナ再びそれぞれの想い
 「綺麗に出来上がりましたね」
プリシラがシュウの作品を絶賛。
シュウも良い作品が出来上がり、満足していた。
「本当に良く出来ています」
エレーナがシュウの作ったコーヒーカップを手に取ろうとしたその瞬間、カップは床に落ち、粉々に割れた。
「あっ、カップが!」
出来上がったばかりの作品は無残ながれきとなった。
シュウはエレーナのそばにかけつけると、
「怪我はありませんか?」
と彼女の顔も見ずに聞き、床に座り込んでカップのかけらを拾い始めた。
「いえ、私ならだいじょうぶです」
とエレーナが答えると、
「なら、いいです」
シュウはそっけなく返した。
シュウは、黙々とかけらを拾い集める。
エレーナもかけらを拾い集めるため、手を出そうとしたが、シュウの片手がこれを阻止、手を出すなという合図を示した。
エレーナは仕方がなく、手を引っ込め、一言もしゃべらず破片をかき集めるシュウをプリシラとふたり、呆然と見ているしかなかった。
シュウはうつむいたまま作業を続け、前髪に隠されたその表情は、窺うことが出来ない。
 
 割れたカップ。
それはシュウが文化祭に美術部の作品として展示しようとしていたものだった。
「どうするんですか? これ、ご主人様が文化祭に出品するものだったんですよ」
プリシラが怒ると、エレーナは、
「申し訳ございません」
ただ謝るばかり。
シュウは破片を回収し終えると、エレーナ達に振り返ることもせず、美術室を出た。
その後、シュウは独りになり、割れたカップを接着剤で一つ一つ組み立てた。
だが、何度組み立てようとしても、破片はすぐにばらばらとなり、簡単には接着しない。
エレーナとプリシラはシュウに気づかれないようにひそかにその光景を見守っていた。
自分の不注意が引き起こしたこととはいえ、あまりにも哀れな光景に、エレーナは胸が痛んだ。
シュウは、なかなかくっつかない破片にだんだんと嫌気が差してきた。
最後は破片を机の片隅に乱暴に押しやり、作業を投げ出した。
 
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