時空連鎖のクロノス



「ただいま」

一応言う。

親は働きに行っていていないけど。

「おかえりなさい」

「っ!?母さん、早いね!」

今日は母さんがいた。

母さんは居間に座り込んでいる。

「父さんが死んでから結構たつわね…」

「ん…あ、あぁ」

「母さんね、疲れちゃったのよ」

「え?」

「母さん、働くの、嫌になっちゃった」

そう言う母さんの顔は苦痛で歪んでいて、蒼白だ。声も震えている。


よく見ると母のお腹からは血が出ている。

「母さんっ!?」

今更気がつく。

母さんはぐったりと倒れ込む。


「ち、くしょ…」

父さんのせいだ。父さんが死ぬから、俺と母さんを置いていくからっ…だから母さんはっ


『筒路くんは、やり直したいこと、ないの?』


いつか聴いた郁奈の 声。

郁奈はやり直せたのだろう。

だから、今は。


俺は?

俺のやり直したいことは?

俺は何も考えずに沼へと向かっていた。




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