スイーツな関係
「いらっしゃいませ。本日はお越しいただきありがとうございます」


彼は少し低めの良く通る声で言うと、私達に一礼した。


父は立ち上がり、私も習って立ち上がる。
優雅に自分を良く見せる立ち上がり方。


「料理、素晴らしかったよ。娘の麗香だ。君の料理に絶賛してね」
「麗香です。本当に非の打ちどころがないお料理を堪能させていただきました」


私は上品に微笑んでみせる。
この表情だけで、大抵の男は胸を高鳴らせてくれる。


「お気に召して下さり光栄です。では、デザートをお楽しみください」


軽く頭を下げた彼は忙しいのか、表情は柔らかいもののすぐに立ち去ろうとした。


計算外だった。


待って、と声をかけようとした時には彼は私達のテーブルから離れていた。


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