スイーツな関係
私のことを覚えていないの?


心の中でムッとしながら、心臓を暴れさせた自分がバカみたいに思った。


「ちょっと待ってください!」


背を向け数歩歩いた彼を私は呼び止めていた。
その声に彼は立ち止まり、振り返ったがテレビで見た誰をも蕩けさせる笑顔はない。


「失礼します」と小さな声が聞こえ、後ろでドアが閉まる音がした。
樋口さんは気を利かせて下がってくれたのだろう。


私は一呼吸してから口を開いた。


「あ、あの お時間を作ってくださいませんか?」
「時間?」


形の良い片方の眉を上げ、なぜ?というように見ている。


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